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『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(デヴィッド・フィンチャー)

公開当時にはなんだか気が向かなくて観に行かなかった作品。たしか予告編が好きじゃなかったんだよなぁ・・・若々しくバイクで駆けるブラピのショットが嫌だったし、勉強が忙しくて映画館にはあまり行けない時期だったし、何よりVFXに拠るところが大きい作品が好きではなかったから。でも今日DVDで観て猛省。これは劇場で見るべき作品だった。
ベンジャミンが船乗りになることを決意し、家を出るシーンが素晴らしい。ブラッド・ピット・・・ではなく、ベンジャミンの身体だけ演じた俳優の軽やかな歩き方も良いし、「どこにいても葉書を書いてね」と言われて去ってゆく彼のバックショットから純白のリボンで束ねられた葉書のアップショットへのつなぎ!! これには泣かされた。だって、リボンが本当に綺麗な白なんだよ・・・ DVDに収録されている監督の音声解説によると、このつなぎは編集のアイディアだそうです。素晴らしい。
デイジーがパリで事故に遭うシーン。暗い色調の画面のなか、ターンしながら外へ出る彼女のコートの黄色が記号としての黄色(『エレファント』)ではなく視覚的に美しい。その次のシーン、病室でベンジャミンを見て「あなた、完璧ね」と言われたときのベンジャミンの表情。思いもよらなかった言葉に対して戸惑いとかショックとか、いろんなものが詰まった何とも言えない凄い表情にすっかり魅了されてしまった。ブラピ様さま。
デイジーですら知らなかった事実(パリに残っていたこと)やキャロラインの出生、ベンジャミンとの接触が明らかになり、残された人間の人生に少なからず影響を与えてゆく語りも、(目新しいものではないが)キャロラインのリアクションが良かったから観ていて面白かったです。公開当時には「三時間かけて観る価値のある映画じゃない」なんて厳しい意見も聞いたけど、それは違うと思う。自分が見れない世界がいっぱい詰まっていた。2010年のいい締めくくりになりました。