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『フィリップ、きみを愛してる!』

去年の夏ごろにどっかから作品のチラシをもらってきて、地味に楽しみにしていた作品。いくつもの嘘を乗り越えて結ばれるゲイカップルの物語。
ジム・キャリー演じるスティーヴンの回想で物語は始まるんだけど、この冒頭がテンポもいいし面白い。事故で顔面ボロボロになりながら「ゲイとして生きる!」と宣言する強烈なシーンや、スティーヴンが暗闇のなか腰を振るセクシーかつ爆笑のベッドシーンで観客をすっかり虜にする。綿矢りさの書き出し並に面白かったです(←最上級だよ!)。
物語の大半は刑務所が舞台になっているんだけど、ちゃんと塀の外と中の差が画面で示されているところが良いと思った。ラブコメディだから、オープンな雰囲気の刑務所に白やオレンジの囚人服を用いることで例えムショの中でも明るい雰囲気作りはなされているんだけれども。でも屋外の、あの輝く光には及ばない。明るい屋内よりもさらに明るく、これでもかって程きれいな光でとにかく明るく撮られた塀の外。スティーヴンが病室を抜け出して飛び降りるシーンでは、彼の背景にできるだけ空が大きく映るように。妻のデビーのブロンドがやわらかく輝くように。この光溢れる外の世界が後半、これまでになく暗い部屋のベッドに横たわるスティーヴンによって見つめられるショットの過酷さ。これまで塀のなかにいても自由に生きていたスティーヴンを、悲劇的な状況へと追い込む。
しかしラストでスティーヴンを照らす至高の光!!独房のなかにいるはずの彼を包む光は屋外のそれよりも強く、崇高に思えた。