ぼくらが旅に出る理由
震災のときの写真のうち最も印象に残っているものに、カーキ色のジャンパーに長靴をはいた少年が口を一文字にキュッと結び、足元を見つめながら水を運んでいる写真がある。わたしにとって被災地で力強く生きる人々の象徴のような存在となっているその少年のことが、今朝の新聞に掲載されていた。小さな記事ではあるものの少年が今も元気に暮らしているという事が知れてほっとした。
「芸術家になりたい」という言葉を最近よく思い出す。被災地のある別の少年が、将来何になりたいかと尋ねられたときの答えだ。私の記憶違いで若干異なる言い方だったかもしれないが、しかし「芸術家」という言葉ははっきりと覚えている。芸術家になりたい。その言葉だけで私は生きてゆけそうな気がする。
あすで半年。
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ビルケンのモンタナを注文した。中学のころからあこがれていた靴。あとはヴィヴィアンのロッキンホースバレリーナとマーチンの20Hがほしい。どちらも年齢制限がある感じの靴なので早めに手に入れたい。
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フジファブリックが小沢健二『ぼくらが旅に出る理由』をカバーすると知って胸が一杯。ひふみよ『矢』http://hihumiyo.net/ya.html
私の運命線
10月8日から私の地元那覇の映画館、桜坂劇場でゴダールの最新作『ゴダール・ソシアリスム』といくつか過去の作品が上映される。せめて『気狂いピエロ』だけは沢山の方に見て欲しいなぁと思いながらyoutubeでアンナ・カリーナが《Ma ligne de chance》を歌うシーンを見る。
読んだひとが作品に興味を持ってもらえるような短い文章を書いて、間に合いそうなら新聞社に送りつけて読者投稿欄に掲載してもらおうと思っている。もしダメならfacebookとかmixiに載せる。これで一人でも劇場に足を運んでもらえれば嬉しい。
しかし去年、「絶対に沖縄では上映されないだろう」と思って日比谷シャンテまで行ったときからもう9ヶ月も経つなんて恐ろしい…ほんと、1年なんてあっという間。
『秋刀魚の味』
7月に入ってからというもの、あまり映画を集中して見ることができなくなりました。自分の将来のことなど不安が大きすぎて、なんだかぼんやりとした気分になって。ツタヤで『スミス夫妻』を借りたのだけどそれもイマイチ楽しめず…しかし『秋刀魚の味』だけは、なぜかすうっと画面に集中できました。
登場人物にはそれぞれの絶望があり、そして彼らがその絶望に向かうとき、きまってキャメラは彼らを横から捉える。たとえばラーメン屋の椅子に腰掛けて寂しげな表情を浮かべ、あるいは涙するヒョウタンとその娘。上の階に住む夫婦に子供が生まれたと聞くと、ふと硬い表情を見せる長男の幸一。そしてラストシーンの笠智衆。彼らはみな横を向いているのだけど、ひとり岩下志麻だけが絶望の瞬間も真正面からキャメラに向かっていることに気づいて愕然とした。ひそかに思いを寄せていた三浦に婚約者がいたことを知らされた後、二階で何をするでもなく、ただ紐を手にしながらたたずんでいる場面。本当に冷たい表情で絶望する岩下志麻を小津は正面から見つめている。小津は何度見ても新たな発見があり、飽きません。